身体の中の矛盾

身体の中は矛盾、というか相反する機能が満ちています。。

例えば、エネルギー代謝。特に運動指導の専門家に限らず、身体に関する専門家であれば、必ず運動時のエネルギー供給について学びます。

酸素を使わずにエネルギーを産生する無気的な代謝と酸素を使ってエネルギーを産生する有気的代謝は相反する関係です。

無気的なエネルギー代謝は、とっさのときに身体を動かす時に活躍し、素早くエネルギーを生み出すことができます。

しかしながら、素早くエネルギーを生み出すことができるものの、効率が悪く、多量の糖質を消費する上に、乳酸という燃えカスのような副産物を生みだします。燃えカスですからまた燃やせば、エネルギーとして再利用できますが、これが出た時点で、身体を酸性にしてしまいます。

これがたくさん出過ぎると、身体の中でエネルギーを生み出すために働いてくれている酵素の働きを妨げてしまいます。結果、身体は自由に動けなくなってしまいます。めったにあることではありませんが、さらに極端な状況に陥れば自らの細胞を破壊してしまいます。

一方で有気的代謝は酸素を使ってエネルギー源を分解するという過程があるため、エネルギーを生み出すのに時間がかかる代わりに、少量のエネルギー源で非常に多量のエネルギーを生み出すことができます。

すなわち効率が良いといえます。いいことずくめのようにも思われるかもしれません。

しかし、もし身体のエネルギー産生がこれだけに頼っていると、突然なにか不都合な状況が起こった場合、素早い行動や俊敏で力強い行動ができません。

例えば、クマなどに襲われれば、抵抗も逃げることも思うようにできず、あっという間に餌食にされてしまうでしょう。

スポーツのトレーニングでは、一般的にその運動形式がどういうエネルギー系統が優位に働くかによって、優先するべきトレーニングの形式、方法が変わってきます。しかし、いくらその競技に必要だからと言って、一方を強調しすぎるあまり、有気的、無気的なバランスを極端にくずしてしまえば、パフォーマンスアップどころか調子を崩してしまうかもしれません。

またダイエットで食事で糖質・脂質を極端に制限して、それらををエネルギーとして使うことが難しくなれば、タンパク質を代謝してエネルギーを得ようとします。いいかえれば、身体を犠牲にしてエネルギーを得ようとする。

自分を生かすために自分を損なう・・・というところでしょうか。

うーん身体と言うのは本当に不思議です。

また、ホルモンには負のフィードバック機構と言うものがあります。これはあるホルモンが多量に体の中に放出されると、脳のある部分がこれを感知して、そのホルモンの放出を抑える命令を下します。

そう考えると、スポーツの世界で問題になっているステロイドの使用が、かなり健康に対してリスクのあるものだということがわかっていただけると思います。
また、あるホルモンが不足することで起こる病気を治すためにホルモン補充療法も効果が上がるだろうということは予測されますが、一方で、このリスクを十分に考慮する必要があるでしょう。

矛盾しているからこそのジレンマです。

身体の構造にもこのような矛盾はたくさん存在します。

例えば足。足は26個の骨で構成されています。足は重心を移動させる際に身体を押し出すときには硬いレバーになり、着地などの時には衝撃を吸収するクッションとなります。

この機能のどちらかが破たんすれば、何等かの障害が起こるでしょう。

強さの柔軟性の問題。これも同様です。

心の問題も同様です。心の中にもいろいろな矛盾があります。仕事をしたいと思う心と遊びたい心。一人でいたい心と誰かと一緒にいたいという心。人の幸福を喜ぶ心と不幸を喜ぶ心。数え上げるときりがありません・・・。

身体の中の機能、心の機能が矛盾しているからこそ、うまくバランスをとって生きていられるともいえないでしょうか。

合理的、合理的と言いますが、合理を求めすぎると不合理になってしまうのが、身体と言うものかもしれません。

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