マイルス・デイビスと自己の探求

先日、たまたま見たNHKのBSかなんかのチャンネルで、巨匠の青の時代というテーマだったかな?で、マイルス・デイビスの特集をやっていました。その内容が自分の知らない色々な事実を知ることができたし、内容にも非常に感銘を受けました。

この前にレコードの話をしたばかりですが、

今回の話も、やはり身体づくりとか、人間のパフォーマンス、さらには自分の仕事のスタンスというものを考える上で、すごくヒントになるな~と勉強になりました。

マイルス・デイビスと言えば、ジャズ好きな方なら、知らない人はいないジャズトランペットの巨匠。私よりももっといろいろご存知の方も多いと思うので、若干恐縮ですが・・・。

若干うろ覚えの部分もありますが、大まかに5つのポイントに分けて箇条書きすると、

①マイルス・デイビスもはじめから巨匠だったわけではなく、むしろ目立たず、若干ダメプレイヤーだったということ。

②背が小さく、唇も弱かったため、大きな音や、高い音がうまく出せなかった。無理をすると唇も切れるほどだった。

③ある時、チャーリー・パーカーのバンドからディジーガレスピーが抜け、成り行き上その後釜となったとき、当然、ガレスピーのような演奏が出来ず、実際上手くゆかなかった。

④悩んだ挙句、マイルス自身が好きで、あまり派手なテクニックや吹きまくるスタイルではないプレーヤーのスタイルを「まねて」実際のレコーディングを行った。それがその後のマイルスのスタイルを決定づけて、トッププレイヤーへの基礎となった。

⑤彼自身は成功を収めたあとも、ある一つの理想の音を目指して死ぬまで探究を続けた。

①~③に関しては当時のスタンダードなスタイルがディジー・ガレスピーのような、広い音域(特に高音)を出せて、アドリブのテクニックもすごくて、吹きまくるようなスタイルだったようですが、②のような理由で、マイルスはそういうものを一度は目指していて挫折していたということです。

しかし、④に関してですが、マイルスでも真似できそうなF・ウェブスターというプレイヤーを参考に自分のスタイルを変え、それがうまくいったということらしいです。
実際の演奏では、高音域をそれほど多用したりいたずらにテクニックを弄するようなことをせず、どちらかと言うと平易な音で表現し、いわゆる「間」をうまく使ったりするようになったということです。

言い方は悪いですが、「マイルスでもパクることあるんや~」って思って、ちょっと親近感(笑)。

そして、彼の代名詞と言われるあのミュートの音についても、音の違いを出すために踏んづけたり、壁にぶつけたりしてベコベコにするアイデア。実に面白い!

それに「間」を大切にするなんて、ジャズの世界にもあったんですね!!もちろん芸術の世界ですから、当然かもしれませんが、大体、ジャズの舞台がわびもさびの文化もない、テクニックや理論などが先行する、砂をかむようなアメリカですからね(失礼&笑)。日本だったら、「間」はもちろん、「余白の美」とか、何にもないところに価値を見出すのはお家芸なんでしょうが、、、。

アメリカのわびさびなんか認めず、実質を重んじる部分に敬意を表する部分もあるのですけれどね。

いずれにしても感動しました。

さあ、最後の⑤ですが・・・
いわゆるモダンジャズだけでなく、ファンクとかフュージョンとか最後にはヒップホップまでジャンルにこだわらず音を探究してきたマイルスも、最終的には一つの音を探究していたというのもスゴイ!って思いました(ちなみに私はモダンジャズのマイルス・デイビスしかほとんど知りません)。
その理想の音とは、6~7歳のころ強烈に心に残った音、森の中で一人の女性が歌う美しい声だったというのです。

いったい、どんな声やったんやろ~????

うちの息子もいま7歳ですが、あんなチョロチョロ、ちょこまかしたのが、感動した音が一生心に残ってその後の人生を決定づけるって、なんかスゴイことやな~と思って、勝手な想像もありますが、思わず涙が出てきました。

マイルスの友人曰く、晩年の曲の「ハンニバル」という曲でもその声を探しているんだなということがわかるということです。探して聞いてみたくなりました。

かつて、ジャズ好きで有名な元NHKの木村太郎さんなんかは、どんどん変化していくマイルスに対して、ある時インタビューで50年代のジャズのスタイルがどんどんなくなっていることに対して否定的な質問をしたそうですが、マイルスは「音楽は楽しくなければ意味がない」という趣旨のことをいって、古いジャズのスタイルにこだわる木村さんの質問を真っ向から否定されたというのを、木村太郎さんの本で読んだことがあります。

今考えると、マイルス・デイビスは自分の音、ジャズのスタイルではなく自分のスタイル、そして音を、どんどん探究していたのかもしれないなと思いました。

さてさて、身体にはあまり関係のない、マイルス・デイビスのサクセスストーリー、および音楽の話ばかりでしたが・・・・

身体づくり、スポーツのパフォーマンス、そして自分の仕事とどうリンクするのか・・・

結局、自分と言うものを知らなきゃ何も始まらないんじゃないか、ということです。

世の中、いろいろな身体づくりにしても、パフォーマンスにしても、上手くいくといわれる方法論やシステムはゴマンとあるように思います。

しかし、それを受け入れ、取捨選択しようとしている自分というものが、何者なのか、何が出来て、何ができないか、何がしたいのか、足りないものをどう補うべきか、それともいらないものでどれを捨てるべきか、などなど・・・

諸々を掘り下げていくことで、自分の魂を表現する身体づくり(ムキムキ・痩せ痩せ、がすべてではない)、魂を表現するパフォーマンス(スポーツに限らず)、そして魂を表現する仕事というのができるのではないかなと勝手に思って自戒した次第です。

もっともっと掘り下げます!

そして、IT'S ITO'S PILATES!!!も、自分を含め、自分を探究する人のためにありたいと思います。

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