伸びる動きと鼠経ヘルニア
鼠経ヘルニアの30代男性
鼠経ヘルニアを悪くしないようにということで来場されています。
鼠経ヘルニアは、簡単に言うと、本来ならお腹の中にあるはずの腹膜や腸の一部が、多くの場合、鼠径部の筋膜の間から皮膚の下にはみ出してくることです。
さて、全身的な観察では、特に見た目の姿勢の悪さのようなものはみられません。
しかし、立ち方そのものを見ると、 なんとなく重力で下に引っ張られているような印象です。
もちろん重力に抗して立ってはいるんですが、どこかでその一部が抜け落ちて、崩れかかっているような感じでしょうか。
その抜け落ちているところは?と、より細かく見ていくと、
いろいろと観察されることがありました。
ヘルニアになった原因は実際のところはわかりません。
おそらく一つの原因のようなものとして、
「伸びる意識」の欠如がヘルニアのある側で見られました。その欠如の中にいろいろと細かいことがあるんですが、そこは省きます。
伸びるというのはストレッチのような伸びとは少し違います。
もちろんそういう側面もあるのですが、この場合特に重力方向への縦軸に長くなる意識です。
この意識がより体の内部の筋肉を程よく緊張させて内臓など体の内部を引き上げるように働き下に落ちる力を分散させ、骨盤や腹横筋や骨盤底筋など、下からの内臓のサポートをしやすくしています。
伸びる意識がなくなると、当然身体が緩み、重力方向へ落ちやすくなります。
この方の場合、緩んだことで、力がたまたま鼠経部のヘルニアになりやすい部分に集中してしまったのかもしれないということも考えられます。
写真のような動きをしてもらうと、明らかにヘルニアのある側の動きが不自然で、本人もとてもやりづらいと訴えます。
だからといって、単にこのような動きの練習をすればいいというものでもないような気がします。
これはわかりやすくするために少し大げさに動いてもらっています。
重力方向で伸びる。と一言で言っても、単に直線ではなくて、実際、そこにはいろいろな力の要素が絡み合ってますからね。
さらにさかのぼって、なぜこの伸びる意識が抜け落ちてしまったのか?抜け落ちるさらにきっかけや要因は何か?
ここを考えていかないとより深い指導はできないような気がします。
この方は、過去に気胸などの既往もあります。これらの影響も無視できません。
いずれにしても、鼠経ヘルニアはいったん発症してしまえば手術などの外科的な治療しかないといわれているようです。
この方も、基本的には手術を考えておられます。
ただ、IT'S ITO'S PILATES!!!で運動したときには、引っ込んで調子がいいようです。少し日が経てばまた出てくるということです。
立ち仕事で話をしているときなどに、腹圧がかかると徐々に飛び出してくるそうですから、やはり無意識の姿勢や動き部分の影響が大きいですね。
一時期、トレーニングの世界で腰痛予防に腹圧、腹圧といろいろな人たちが知ったげによく言われたもんですが、
そういう意味でも、腹圧もかけりゃいいってもんじゃあありません。
ということで、無意識の部分を変えるというのは本当に難しいものです。でもこつこつとやるしかありません。
とにかく、我々のできることは、手術までの期間に悪くならないようサポートすることです。
今回も体を伸ばす意識の仕方についてのセッションでした。