人と比べることとその基準

あるIT’S ITO’S PILATES!!!の個人クライアントである年配の女性からこんな話を聞きました。

「同年代位で、杖をついて歩いている女性が、私より重い筋トレのオモリを上げることができてたんです!ショックでした・・・そしてうらやましい」

と。確かにその女性は筋力において少し自信がありませんが、杖をつくことなく、姿勢も年齢からみてもまっすぐで、30分くらいはあまり苦も無く歩くことができる、というか、ウチに来て下さるようになって、だんだんそうなってきた女性です(ここは一応ウチの宣伝。スミマセン!)

私は逆にこの言葉を聞いて少なからず衝撃をうけました。

これに関して、いろんな見方・解釈ができると思いますが、私なりにちょっと考えてみました(そういう意味では独断と偏見、そして想像、妄想?があることをお断りしておきます)。

もちろん私には、どういう経緯で、その杖の女性が杖をつくようになってしまったのかわかりません。脳卒中の後遺症?変形性の疾患?ヘルニア?またはそれらに関する何等かの外科的な手術の結果?もしかしたら不可避の事故でそうなったのかもしれません。

その杖をついている女性は、なんとか悪くならいないように、あるいはもっと元気になりたいと頑張って筋トレを行っているというところでしょうか。

そして、その運動の結果、筋力が強くなったか、あるいはたまたまそこに初めて来て、もとからそれくらいの筋力は持っていたのかもしれません。

いずれにしても、その事実を切り取って見た、私のクライアントの女性は、その「筋力」そのものに、羨望(うらやましい)であったり、さらには自分自身の劣等感(ショック)を刺激されたのでしょう。

しかし、おそらく一般的には、その杖の女性からみれば、同じ年代の女性が杖をつくことなくまっすぐ立ち、そして自由に歩けることをうらやましく思うはずです。

よくよく考えてみると、あまり驚くことではなく、こういうことっておそらくよくあることなんじゃないかとより強く思えてきました。

そして、自分にも客観的に見れば、あるような気がします。いや、あると思います。いやいや、絶対あります(笑)。

また筋力以外でも、人と比べて、身体のやわらかさについて、開脚ができるか否かとか、手が背中で合わせられるかどうかとか、床に座った姿勢で足裏を合わせて膝が床に付くか、付かないかとかいう場面を目にします。

でも、何のために柔らかくなければいけないのでしょうか?本当に柔らかい方がいいんでしょうか?先ほどの例の筋力にしても、本当により高い筋力が必要なのでしょうか?

よく、私もそういうことがありますが、色々な運動の指導者も「人と比べないでくださいね」と言う割には、「柔軟性を高めましょう、筋力をつけましょう!」と言いますよね。

答えはイエスであり、ノーでもあります。もちろん筋力はあった方が何かと好都合です。柔軟性も然り。今の時点の考えは、やはり筋力にしても、柔軟性や可動域にしても、その時点のその人にとって必ず適正な範囲があると思います。

異論は覚悟でいえば、強さはハリとか硬さと隣り合わせですし、柔軟性は不安定さと非常に近い。また使われなくても硬くなります。また柔軟体操をして痛めてしまったというのもよく聞く話です。

いったいどうすればいいんでしょうか(笑)。一般の人は特にわからなくなりますよね。

ここで、言いたいのはストレッチも、筋トレ、ウエイトリフティングもナンセンスだといいたいのではありません。ましてや生活動作に近いファンクショナルトレーニングがいいのだとか、体幹トレーニングはどうだ、とか全くいうつもりはありません。ピラティスは完璧なエクササイズだ!!と売り込むつもりもなければ、やっぱりヨガだ!!というつもりもまったくありません(笑)。

全てはメリットデメリットがあり、バランス(バランスボールの上や不安定盤の上にうまく立てるという意味のバランスではありませんよ)なのだろうということです。

例えば、陸上競技で言えば、世界陸上でスプリント種目200mで銅メダルを取った末續選手は高校時代の後輩の証言によれば、かなり体が硬かったそうです。陸上競技の指導をしていた時に私の教え子である、彼の直接の後輩から聞いた話ですので、信憑性の高い話です。

私は陸上をやっていたので、良くわかりますが、意外とこういう例は多いです。

これが事実とすると、怪我をしやすいかどうかは別として、あの高いパフォーマンスには柔軟性はほとんど貢献していないかもしれないということが推測されます。

逆に筑波大時代には、一流の水泳選手は水の中で泳ぐことに適応して、非常に身体が柔軟な人が多いのですが、そういった選手がオフシーズンに陸上トレーニングをするときに簡単に怪我してしまうという例が多いことも水泳部のコーチをしていた先生から聞いたことがあります。これは柔軟性があだとなってしまう例ですよね。

一方で、私の大好きなイチローはストレッチを欠かさないと良く聞きます。やはりイチローにとっては必要なことなのでしょう。インタビューを聞いたところ、これは心理的な意味も大きいのではないかなとは思いましたが。しかし心理的なものも当然軽視できません。

こうやっていろいろ見てくるとスポーツのパフォーマンスと一言でいっても競技や個人で相当な差があることは明白です。

そしてそのバランスの形は一つの形ではなく、人によって様々であるといえるでしょう。したがって誰にでもあてはまるユニバーサルなものってほとんどないんじゃないでしょうか・・・・

さて、人と比べることに関してあーでもない、こーでもない、とあれこれ考えすぎて長くなった割りには大したことない結論になってしまいましたが・・・・(-_-;)

ここで一区切りして、そういったことを自分で判断する基準について、また次回に話したいと思います。

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