カワハギの動きと筋肉と人間の動きについて

先日カワハギの刺身を造りました!

そこで観察したことでいろいろ考えたことがあります。動画も撮りました、動画はこちらで・・・

カワハギは生態として、主に水中でときにゆっくりと泳いだり、あるいは静止したまま身体の向きを変えてエサをたべたりして、あまり早く泳ぐことはありません。

したがって、通常は尾びれをあまり使わず、背びれと腹ビレを使って水中での身体のバランスを取っています。

今回、基本的には食べるためですが、3枚おろしにして、「解剖」してみるとこれが一目瞭然。

カワハギは基本的に近海の魚で、カツオ、マグロのように回遊する魚ではなく、白身(筋生理学的にはFT線維、または速筋)の魚ですが、常に使用する背びれの筋は赤みがかっています。すなわちST線維、または遅筋線維の特徴を示しています。

この筋線維を手で引っ張ると背びれが見事に動きます。

ご存じのように、速筋線維は瞬間的に強い力を発揮することには優れていますが、易疲労性(疲れやすい)です。反対に遅筋線維は瞬間的な強い力を出すことは苦手ですが、疲れにくく持続性があります。

カツオやマグロのように非常に遠洋の長い距離を回遊する魚は、濃淡はありますが、全身赤身です。これすなわち長い距離を泳ぐように適応している魚なのです。

さて、ひるがえって、人間にとって、カワハギの背びれを動かす筋と同様に常に使われる筋はどこの筋肉でしょうか??

それは抗重力筋と呼ばれる筋で、たとえば脊柱周りの筋やヒラメ筋が有名です。そのほかにも、また骨の近くにあり、重力下で関節を安定させ、身体を直立で安定させるのに重要な働きをする筋群だといわれています。

水中ではマイルドに働く重力も、地上ではダイレクトに我々に働きかけます。もちろん重力に対抗しているのは筋だけではありません。筋膜や靭帯なども重要です。

水中、地上、いづれにしても、その生物は与えられた条件に対し、効率よく適応しなければうまく生きていけません。

カワハギのように、大脳がほとんど発達していない生物はこれらの動きを原始的な脳、すなわち無意識的に制御していることは明らかだと思われます。したがって個体差はほとんどなく、またあったとしても、おそらく、カワハギの生活条件や身体組成にそぐわない動きの個体は生き残っていけないでしょう。

しかしながら人間は大脳が発達しているため、さまざまな動きの自由度を獲得して、意識的にも、いろいろ工夫して自分の動きを変化させることが可能な反面、実際の設計された身体の構造とその構造に合った身体の動きから逸脱、あるいは未熟な動きが多々あり、健全性を失ってしまう危険にさらされているのではないでしょうか?

いろいろな自由度のなかでも、より人間の構造、組成に合った動きを獲得して洗練することは重要であるように思います。

と、自分が考えてきたかのように書いていますが、これらの事は証明されているのかいないのかはわかりませんが、推測にせよ、いくつかの文献で見ることができ、私の経験からもこれらの可能性は非常に高いと考えています。

例えば、運動生理学の世界では有名な筋線維の動員の順序について確立された「サイズの原理」。これはHennemanという学者がネズミの実験をもとに確率したものですが、人間のヒラメ筋での実験では、どうもこの原理には当てはまらないことがあることが報告されています。

やはり、現場で人の動きを観察する機会がある私には、この原理が、通常の人間の運動の際に完全に発揮されているとはあまり思えません。

大脳の発達していない動物のデータと我々は明らかに違います。そこにはやはり想像力、観察も相当必要ですね。

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