レグレッションとプログレッション
先日もFACEBOOKで少触れたことがありましたが、運動と感覚についてのセミナーに出席しました。
大体、感覚だ、脳だというと、いってみれば運動、身体の全てに絡んでくるので、科学的に理路整然と話をしようとするとはっきり言ってめちゃくちゃ込み入って難しくなります。
運動にとってはほんの一部分で些細なことでも、文字にしたら、小さい字で何ページにも及ぶほどのとんでもない量になったりする情報があったりします。
脳なんてわかっていないことだらけなので、大きな考え方はそれほど変わらなくても、細かいところは時代とともに話はどんどん変わってくるし、たまに一部根底から覆るような発見なんかがあるでしょうから、研究者以外は話半分くらいでちょうどいいんです。
でも、非常に勉強されている先生でしたし、そういったことを決して人まねでなく、自ら運動指導現場で生かそうと試行錯誤されているところは凄いです。
やはりこれからの運動指導の一つの新しい重要な課題になるだろうなとも思いますし、せっかくいい話がたくさんあったので、ちょっと資料なんかを見直しつつ、いろいろ面白かったことを少しシェアしつつ、自分のやっていることを見つめなおし(宣伝?:笑)ながら、ブログに書きたいなと思いました。
今回のテーマは表題のとおり、レグレッションとプログレッション(regression, progression)です。
レグレッションは直訳すれは、後退または退行、プログレッションは前進、進歩などの意味で、
トレーニング・運動の世界ではレグレッションは課題を簡単にすること、あるいは負荷を緩めることで、プログレッションは、まさに進歩させること、課題をむずかしくすること、負荷を上げることに使われます。
たとえば、ウエイトトレーニングでは重りを重くして上げることはプログレッションになります。ピラティスなんかでは体重支持面積を減らしたり、不安定にしたり、より複雑な動きの課題にしたりします。
認知系のコオーディネーション、コーディネーショントレーニングでも、大概は運動課題、認知課題を増やして、例えばドリルをやりながら、ランダムな外乱を加えたり、動く方向を突然の合図で変えたるするようなことやることでしょう。
しかし、感覚や神経から、違った見方をすれば、その逆がプログレッションになることがあります。つまり、負荷や課題を減らしたり、簡単にしてもプログレッションになりえるということです。
これは非常によくわかりました。そのセミナーでは動画を使ってわかりやすく説明してもらいました。
バーベルをもって上手にスクワットができるのに、重りなしで、自重だけだと、動きがぎこちなくなる人。
これは結構あるあるな話だと思います。
一つの説明として、足底からの感覚フィードバックの刺激の情報はバーベルを持っているほうが強いので、脳がそれを感知しやすくコントロールができるが、その感覚情報が減る、つまり重りがなくなるとコントロールがむずかしくなるというのです。
通常筋力的な視点では重りを増すことはプログレッションですが、神経・感覚的な視点から言えば重りを減らすことがプログレッションなんですね。
ピラティスでもやはりありますね。リフォーマーのフットワークなんかは、スクワットの例と同じで、スプリングの負荷を減らすと相当難しい課題になります。
こういう場合、外部から帰ってくる情報をしっかりキャッチして過不足なく伝える経路をしっかり訓練、もしくは調整しないといつまでたっても変わりません。
こういう問題をクリアするための視点、考え方はやはりトレーニングの世界には欠けていますし、あっても不十分なような気がします。
そこで活躍するのが意識の部分だと思っています。
そして小さな、ゆっくりとした動き。
内部から、繊細な感覚を「掘り起こす」作業といってもいいかもしれません。
明確な意識が必要になります。
難しくて、実はきつい課題なんですね。相当神経、感覚が活性化されます。これはやってみなくてはわからない。
知らない人がもしこのブログを読んで、やってみたとしても多分わからない人がほとんどかもしれません。
そもそも、その人の中の「小さい動き」「ゆっくりとした動き」の基準まで問い直さなければならないからです。
だから「方法論」や「プログラム」では変わりづらいんです。
指導側の感覚がしっかりしていないと、最終的には感覚は感覚でしか理解できませんからね。
かくいう私もまだまだ開発中です。
一人一人の状況を見て、手ほどきしないと。
そういう意味では私自身もセッションの初期段階として、もう少し筋トレ的な意味合いのものをレグレッションとして導入したほうがクライアントにとってもわかりやすくていいのかなとも思いました。
その人の基準を根本から変えるというのは、言うほど簡単なことではありません。
だからこそやりがいがあるとも言えますね。