胸椎の伸展:矯正、強制から、気づき、誘導へ

先日は若い男性のセッション

 

悩みは胸椎の伸展がしにくいということでした。

普段、どんな運動をしているのかというと、フォームローラーを使って下の写真のようなストレッチをされているようです。

胸椎の伸展ですから、これはもちろん理解できます。ふつうはそう考えるでしょう。

 

でもこれをしょっちゅうやっているのにあまり進歩が見られないとしたら、この運動は少なくともちょっと違うということになります。

 

 

 

 

 

 

話は変わりますが、

実は私は、もともとかなりの猫背で、ピラティスをやるまでは、胸椎の伸展ってなに?っていうほど何もできませんでした。

 

もちろん頭では知っていましたが、そもそも身体自体が、胸椎を伸展させることを知らなかったという感じだったんです。

 

今も得意じゃありませんし、普通の人でも私より伸展が上手な人はたくさんいます。

 

しかし、昔と違うのは「伸展させる感じ」を確実に理解したことです。それとうまく伸展させることができたときの気持ちよさです。

 

私にとってはそれで充分。それ以上伸展を大きくしようという気もありません。

 

トレーナーとして、見本を見せなければいけないから人より伸展がもっとできるようになるためにやらなきゃ!とも思いません。

 

ただ、胸椎の動きは自分のウイークポイントであり健康維持のためにも常に気を配ってはいます。

 

そのことと、胸椎を人よりも大きく動かそうとすることは根本的に違うんです。

 

 

例えば、仮に私がオーバーヘッド動作や、上半身を多用するスポーツの選手であれば、話は変わってきます。

 

リスクを承知で、そしてそのリスクを最小にしながら、そこはやるでしょう。

 

スポーツの特異性の問題だからです。

 

それでもやっぱり限界はありますね。そこは向き不向きの部分も多々あります。

 

ですから、無理やり伸展伸展ばっかりこだわってやるのではなく、今の可動域でいかに自由に使いこなすかを考えたほうが生産的な場合が多いでしょう。

 

というのも、伸展を頑張った結果、その余波としてほかの部分に影響が出てくる可能性が大いにあるからです。

 

つまり、胸椎の伸展の制限があるのは、胸椎だけのせいではなく、また胸椎だけでみても伸展(反る)の動きだけでなく、側屈(横に曲げる)や回旋(捻る)で必ず制限があり(これはフライエットの法則という、オステオパシーだったかカイロプラクティックだったかの世界では有名な法則からもよく知られてます。)

さらに胸椎と関係の深い肋骨や上腕(二の腕)、首、腰・・・・とその範囲はどんどん広がります。それらのバランス関係により胸椎の動きも決まっているわけですから、胸椎だけ頑張った結果、思わぬところがおかしくなってきたりする可能性があるということです。さらに影響は決して骨格筋系だけにとどまるものではありません。

 

普通は、そのおかしくなった原因の一つが、胸椎の伸展だけを頑張った結果だということに気づかないことも多々あるんじゃないかと思います。

 

ある意味、知らぬが仏かもしれませんが、知ってしまった以上、むやみな可動域向上をめざしたり、安易に大きな動きでそれを改善しようとする発想には私はいつも警鐘を鳴らしつづけます。

 

いま、やはりスポーツのトレーニングではどちらかといえば、なにか動きが悪かったり、柔軟性に欠けていたりする時に、なにかと強化、矯正、強制といった感覚でやるエクササイズがほとんどではないかと思います。

機能改善にしたって、機能改善といいながら、結局はこれ強化・矯正でしょ?というものばかりです。

これはあくまでも偏見ですが、コレクティブエクササイズにしても、言葉の響きからして、コレクト(correct:正す)ってどうも、西洋的な傲慢さ、押しつけがましさを感じてしまって嫌いです。

 

繰り返しますが、あくまでも偏見で、好き嫌いの話です。

 

私なんかあまのじゃくなので、やれ!って言われると、やる必要がある、やろうと思っていても、やるか!そんなもん!って思ってしまう悪い癖がありますから(笑。

 

これは私の意識上の偏見ですが、身体の無意識の声ってこういうのが多々あるんです。

 

「私はそれ以上伸展できる状態になってない!だからギューギュー矯正するのをやめてくれ、他をあたってくれ!」

 

そういう声が聞こえてきます。

 

一番言いたいのは、もうちょっと気づきや誘導するという発想がないもんですかね~ということです。

 

またまた話がそれる悪い癖がでてしまいました。

 

男性の話に戻ります。

 

さてその男性も確かに少し動きにくそうではありましたが、胸椎自体それほど硬い感じではありませんでした。

 

調べてみると、先にでた側屈が一方向に動きにくくなっていました。

 

さらに腰椎右側、大体右側から右足先の問題、

 

極めつけは、この方、片目だけですがもともと先天性の視力の異常があるそうで、その影響か頚椎から顎の異常がありました。

 

これらをそれぞれ動きが悪くなっていることを確認してもらいながら動かすと

 

胸椎の動きは本人も驚くほど良くなりました。

 

写真の運動は確認のために行っただけで、全く胸椎の伸展エクササイズは行っていません。

 

 

身体も楽になったと喜んで帰って行かれました。

 

胸椎の動きの悪さだけではありませんが、すべての部分的な関節の動きは全体の状態の総和であって、部分だけ矯正しても体は反発するんですね。

 

1月26日の勉強会では全体の総和と関連する関節の動きについてもやっていきたいと思っています。

 

 

 

 

 

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