蛇の動きと手ほどき
最近、古武術の稽古でとおーい過去の些細な経験ですが、それを思い出しました。
それは多くの人が忌み嫌う蛇の動きです。
蛇の動きといっても、単にその辺をにょろにょろしているのを見たのではありません。
たまたま高校生のときに陸上部の練習で走っているとき、道端の草むらにかなり大きい蛇を見つけ、ガシッと尻尾に近い胴体をつかんだ時の記憶です。
なんせシマヘビだったと思うんですが結構太かった。
そしてあの時の感触の不思議さは、いま生々しく思い出すのですから、結構その時も衝撃だったんだと思います。後にも先にも、おおきな蛇を捕まえようとしたのはあの時だけです。
その感覚はどんなものだったかはあとに説明しますが、
それは手解き(てほどき)の練習をしていたときのこと。
まず手解きの解説をしなきゃいけません。手解きとは、簡単にいえば、だれか他人に握られた腕(手首)をはずす技の練習です。
合気道の教本なんかを見ていると必ず初歩の技の多くがが、技をかけられる人のほうが、かける側のひとの片手、または両手をつかみます。
そして技をかけられるとこんな感じ→
←この投げられてる人も相手の手首にぎってますよね。
私なんか、あれ、なんで手首をとるんやろ~ そんなん実践でありえへんやん!とおもいましたが、
私らにはわからない深い理由があったのです。
そのヒントは技が発達した時代にあります。合気道が有名になったのはせいぜい明治ですが、江戸よりもさかのぼって、そのずっとずっと前の戦国時代あたりから実はあった技術だということです。
つまり武士がいて帯刀している状態が基本なんです。
当然、素手より武器、つまり刀をもっていれば、その人が刀を抜こうとするのを、必ず止めようとします。
それが手首なんです。
そしてその手を振りほどいて相手を斬る!これが手解きの基本形なんです。
そして手解きは、転じて、刀を抜かずに相手を制したり、崩したりということができるので、すべての技の基本ということになります。
あの有名な合気上げは、まさに手解きの転じたものとも考えられますね。
いまではその言葉が、「基本を(から)教わる」という意味で「手ほどきをうける」なんて言い方をします。
ただ、手解きといってもいろいろな種類があります。体捌き、足さばきを利用したり、崩して外す、力をずらして外すなど、形は様々です。
とまあ、師匠に教わった付け焼刃の講釈はこれくらいにして、
その中で、
力の出どころをわからなくして、抵抗をしにくくさせる使い方、やり方があります。
例えば、自分が相手の手首を握ります、そして相手が手を捩じって手を外そうとするとき、例えば親指側を捩じるとこっちは勘づき、その親指側の動きに反応してこっちも力を入れて止めやすい、小指側でも同じ。
でも相手が中指を中心に捩じると、つかんでいる側こっち側は、相手の力の出どころがわからない。
すると抵抗しようにも、どう抵抗していいかポイントがつかめず、相手は結構簡単に手を捩じることができます。
これです!! 蛇をつかんだ時に、味わったあの感覚!!
大きい蛇といっても、まあこっちのほうが身体は大きいし、高校生の時ですからトレーニングもしてましたし、体重は65キロくらいで懸垂だって20回くらいいつでもできましたから、力も結構ついています。
あの蛇の尻尾をひっつかんで、草むらの中の穴のような場所に逃げ込もうとした蛇を引っこ抜くのは簡単だと思いました。
が、とんでもない。
一生懸命つかんでひっぱっているのに、じりじりと草むらの中へ入って逃げていきます。結局逃げられてしまいました。
あの時の驚き、あの感覚は忘れません。
感触を言葉にすると、つかんでいる手のなかで、まず皮の下の筋肉が先に進んで、あとで皮をちょっと引っ張る。みたいな感触です。
蛇の身体の構造なんてよく知りませんし、そういう特別な体のつくりをしているのかもしれませんが、
皮の下で起きていることには何も対処できない!という感じでした。
蛇おそるべし!
ニシキヘビなんかに締められると、あんな感じで何の対処もできんのかな~なんて想像すると、ぞっとしますね~。
と、いうわけで、
先ほどの手解きの手の動きをつうじて、その生々しい感触を思い出したのでした。
動くときの意識の大切さを改めて感じました、そして身をもって教えてくれた蛇さん、ありがとう!
そして、乱暴してごめん!
若気の至りでした。