バレエダンサーのセッション
クラシックバレエをやっている20代女性。
Y字開脚のような動きをする際に、右股関節の痛みがあり、
結構長期間なやまされているようです。
まず痛みの出る動きを確認するため、その動きをやってもらいます。
すると、さすがです。
スパーッと脚がきれいに挙がります。実に見事です。
股関節の柔軟性は申し分ない。ストレッチも当然やってます。
動きのコントロールもしっかりされているように見えます。
一般的にいうところの全身のバランスも悪くありませんし、バレエをやっている人に良く見られる足部の変形もありません。
でも、現実には痛みがある。
さて、よくよく調べてみると、やはり立位に問題が見られました。
特に立位からの重心移動。右脚に体重がちゃんと乗らないのが原因だと推測できました。
そしてそれに大きな影響を及ぼしているのが、胸郭と肘。
まず、胸郭と肘を動かしてもらって実感してもらいます。
そして最初のY字開脚を、フォームをほとんど変えずに、胸郭とひじをの意識を少し変えてやってもらうと、かなり痛みが軽減しました。
さて、次に、下からの影響、つまり足部からの影響を見ると足部から膝、腹部まで影響がみられます。
特に、足部の第四、五指から、外くるぶし、脚の外側、ちょっと後ろよりかな~っていうところのラインです。
その辺を意識して、ピラティスでいうところのサイドレッグシリーズのような動き。
ここら辺でもうY字開脚の動きをしても痛みは出なくなりました。
セッション最初に本人曰く、「いろいろ言われて、やってみるけど、何が正解なのかわからない」とのこと。
その気持ちよくわかります。
これだ!という答えは持ち合わせていませんが、私の見解とすれば、
バレエで良しとする動きと、人間個人として快適な動きとは、特に意識において大分差があるように思います。
バレエは人に見せるのが究極の目的です。バレエという枠の中での独特の美意識に自分を動きを合わせていくのが基本です。
すくなくとも、そう理解しています。
そういう意味で、別々に考える必要もあるでしょう。
しかし、もっと言えば、人としての普通の動きを極めることが、バレエを快適に自分だけの意識でもって踊れるようになる第一歩になるのではないのかなと思ったりもします。
さて、バレエといえば、ですが、
だいぶん以前に、ある講習会で、海外の講師の方が、どういう文脈で言われたがもう覚えていませんが、
「バレエや、ダンス、あるいは体操のようなスポーツの選手は”ムーブメント・エリート”だ」というようなことをおっしゃっていました。
もちろん、わからないことはありませんが、そのときかなりの違和感を感じました。
今となっては、どのような真意でそれを言われたのか知る由もありませんが、もし、そのような美しさを競うようなスポーツをやっている人、あるいはとても普通の人には不可能のような動きをできる人が、ムーブメント・エリートだいう意味なら、
はっきり言って私はナンセンスだと思います。
ムーブメントがどうこう云々以前に、ある特定のスポーツの種類でエリートだなんだという議論も無意味でしょう。
なぜなら、例を挙げるとバレエや体操でエリートレベルの動きができる人でも、ボールを投げるのは人並み以下であったりする例はたくさんあります。
つまり、特異的な動きに適応しているだけの話で、汎用性の高い、普遍的な動きや感覚を身に着けている人はそうそういません。
そのスポーツに対してはエリートだといえても、普遍的な「ムーブメント」のエリートだととは私は思いません。
私の考えるムーブメントのエリートは自分の体の動きについて感覚で熟知している人のことです。
どんなスポーツだろうが、いや、スポーツでなくともムーブメントエリートはムーブメントエリートです。