ゆっくり歩く・速く走る ~ピッチとストライド~
少し前にも投稿した話題ですが、「ゆっくり動けない」という問題。
先日も、ある年配の女性の歩きを観察しました。
セッションの時には、立って姿勢を観察するときもあれば、歩いてもらうときもあります。あるいは体操してもらって・・・などなど、色々な動きを観察します。
どんな動きでも様々な情報が得られます。
さてその女性には歩いてもらったわけですが、「まずゆっくり歩いて下さい。」と歩いてもらったら、ぱたぱたぱたーーーっとまあ、速い速い。
「もっとゆっくり」「もっともっとゆっくり・・・」と何度も歩いてもらうのですが、確かにスピードは少しづつ遅くはなりますが、それでも私の納得する速さではなく、ぱたぱたぱたぱた歩いている
なんでやろ~と思ってよく見ると、ストライドがちょっと狭くなっただけで、ピッチはほとんど変わっていないことに気づきました(笑)
本人様曰く、「よく人から歩くのが速いと言われるんです、せっかちなもんで」「それにゆっくり歩くと、ふらふらするんです。」
そうなんです。確かにせっかちな人は歩くのが速いですが、それだけではない。ゆっくり歩けないのはバランスが取れないからなんですね。
これ、ランニングにもいえることです。本当に強い選手はストライドやピッチを自在にコントロールすることができる。中長距離競技は昔からこれを「チェンジ オブ ペース」といって、瀬古選手なんか本当に素晴らしかった。中距離で言えばセバスチャン・コーですね。
もちろんスピードと体力にものを言わせて前半から突っ走り、そのまま勝ってしまうタイプの選手も例外的にはいます。最近で言えば、800mの北京だったかのルディシャ、あれは度胆を抜かれました。でもあれは体格などに本当に恵まれていて、その他諸々の条件がそろった場合のあくまでも例外(笑)。でも彼がゆっくり動けないかというと、おそらく動けると思います。
よく、ゆさぶりの多い重要な国際レースで、ある選手が、持ちタイムは早いのに、しかも、優勝タイムがその選手のベストより相当遅いのに、惨敗ということが良くあります。これはこのチェンジオブペースがうまくできないことも要因の一つです。
また短距離でも100mのようにずっと全力でいったん調子に走り抜けてるようで、やはり強い選手はダッシュ、中間疾走、後半、そして相手によって、あるいは個人の課題や技術の確認、あるいはなるべく省エネでラウンドを勝ちあがれるようにうまくコントロールしています。
また例によって話がそれてしまいました。
さて、話は戻って、その女性の場合、内容はさておき、セッション後には「自然とゆっくり歩ける」ようになりました(それでももちろん、まだ意識していく必要はあります)。
要するに何でも速く動ければいいというもんではないんですね。
そう考えると、高齢者の歩行速度を測ったとしても、速くなったと言って単純には喜べない部分もあるし、むしろ転倒の危険性を増す可能性だってあります。ましてや、痛みがないといっても速歩をむやみに推奨するのはやはり考え物です。